(6)マタハラ防止のために事業主が雇用管理上講ずべき措置
職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタニティーハラスメント)を防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、主に以下の措置が厚生労働大臣の指針に定められています。
事業主は、これらの措置について必ず講じなければなりません。
なお、派遣労働者に対しては、派遣元のみならず、派遣先事業主も措置を講じなければな
らないことに注意が必要です。
①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
1)ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓蒙
職場におけるハラスメントの内容及び職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の事業主の方針等を明確化し、管
理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(ポイント)
〇マタハラの発生の原因や背景には、妊娠・出産・育児休業等に関する否定的な言動(不妊治療に対する否定的な言動を含め、他の女性労働者の妊娠・出産等の否定につながる言動や制度等の利用否定につながる言動で、当該女性労働者に直接言わない場合も含みます。また単なる自らの意思の表明を除きます)が頻繁に行われるなど、制度等の利用や請求をしにくい職場風土や、制度等の利用ができることについて職場内での周知が不十分であることが考えられます。
制度等を利用する本人だけでなく全従業員に理解を深めてもらうとともに、制度等
の利用や請求をしやすくするような工夫をすることが大切です。
〇 妊娠・出産・育児休業等に関する否定的な言動は、本人に直接行われない場合も含まれます。例えば、夫婦が同じ会
社に勤務している場合に、育児休業を取得する本人ではなく、その配偶者に対して否定的な言動を行うことは、 マタ
ハラの発生の原因や背景になり得る行為です。
2)行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発
職場におけるハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨
の方針及び対処の内容を、就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に
周知・啓発すること。
(ポイント)
〇「対処の内容」を文書に規定することは、ハラスメントに該当する言動をした場合に具体的にどのような対処がなされるのかをルールとして明確化し、労働者に認識してもらうことによって、ハラスメントの防止を図ることを目的としています。具体的なハラスメントに該当する言動と処分の内容を直接対応させた懲戒規定を定めることのほか、どのようなハラスメントの言動がどのような処分に相当するのかについて判断要素を明らかにする方法も考えられます。
②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
1)相談窓口の設置
相談への対応のための窓口(相談窓口)をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
(ポイント)
〇「窓口をあらかじめ定める」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足りず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいいます。
〇 このためには、労働者に対して窓口を周知し、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要です。
〇 相談は面談だけでなく、電話、メールなど複数の方法で受けられるよう工夫する。
〇 相談の結果、必要に応じて人事担当者および相談者の上司と連絡を取るなど、相談内容・状況に即した適切な対応
がとれるようフォローの体制を考えておく。
2)相談に対する適切な対応
相談窓口担当者が、相談(※)の内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
相談窓口においては、被害を受けた労働者が萎縮して相談を躊躇する例もあるこ
と等も踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識
にも配慮しながら、ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれ
がある場合や、ハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対
応すること。
※ 言動を直接受けた労働者だけでなく、それを把握した周囲の労働者からの相談も含まれます。
(ポイント)
〇放置すれば就業環境を害するおそれがある相談や、ハラスメントの原因や背景となるおそれがある妊娠・出産・育児
休業等に関する否定的な言動に関する相談も、幅広く対象とすることが必要です。なお、マタハラの対象となる労働
者は、妊娠・出産した女性労働者及び制度等を利用する男女労働者ですが、妊娠・出産・育児休業等に関する否定的
な言動の相手は、本人に限られないため、そのような相談も受け付ける必要があります。
③職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
1)事実関係の迅速かつ適切な対応
事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(セクシュアルハラスメントの場合には、必要に応じて、他の事業主に事実関係の確
認に協力を求めることも含まれます(※)。)
※ 協力を求められた事業主には、これに応じる努力義務があります。
(ポイント)
〇事案が生じてから、誰がどのように対応するのか検討するのでは対応を遅らせるこ
とになります。迅速かつ適切に対応するために、相談窓口と個別事案に対応する担当
部署との連携や対応の手順などをあらかじめ明確に定めておきましょう。
〇事実確認は、被害の継続、拡大を防ぐため、相談があったら迅速に開始しましょう。
〇事実確認に当たっては、当事者の言い分、希望などを十分に聴きましょう。
〇相談者が行為者に対して迎合的な言動を行っていたとしても、その事実が必ずしも
ハラスメントを受けたことを単純に否定する理由にはならないことに留意しましょ
う。
〇マタハラは、業務上の必要性や、その言動の前後関係も含めて判断する必要があ
る点に、留意する必要があります。
〇事実確認が完了していなくても、当事者の状況や事案の性質に応じて、被害の拡大
を防ぐため、被害者の立場を考慮して臨機応変に対応しましょう。
〇ハラスメントがあったのか、又はハラスメントに該当するか否かの認定に時間を割
くのではなく、問題となっている言動が直ちに中止され、良好な就業環境を回復する
ことが優先される必要があることは言うまでもありません。
2)被害者に対する適正な配慮の措置の実施
職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、
速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
(ポイント)
〇被害者に対する適正な配慮の措置には、取組例のほか、職場におけるハラスメ
ントにより休業を余儀なくされた場合等であってその労働者が希望するときには、
本人の状態に応じ、原職又は原職 相当職への復帰ができるよう積極的な支援を行うことも含まれます。
3)行為者に対する適正な措置の実施
職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合には、速やかに行為者に対する措置を適正に行うこと。
(ポイント)
〇 ハラスメントの事実が確認されても、往々にして問題を軽く考え、あるいは話が
広がるのを避けるため内密に処理しようとしたり、個人間の問題として当事者の解決に委ねようとする事例がみられます。しかし、こうした対応は、問題をこじらせ解決を困難にすることになりかねません。
〇 適正な解決のためには、相談の段階から、事業主が真摯に取り組むこと、行為者
への制裁は、公正なルールに基づいて行うことが重要です。
〇 行為者に対して懲戒規定に沿った処分を行うだけでなく、行為者の言動がなぜハ
ラスメントに該当し、どのような問題があるのかを真に理解させることが大切です。
4)再発防止措置の実施
改めて職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。
なお、職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
※ 協力を求められた事業主には、これに応じる努力義務があります。
(ポイント)
〇 職場におけるハラスメントに関する相談が寄せられた場合は、たとえハラスメ
ントが生じた事実が確認できなくても、これまでの防止対策に問題がなかったかどうか再点検し、
改めて周知を図りましょう。
④併せて講ずべき措置
1)当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知
職場におけるハラスメントに関する相談者・行為者等の情報はその相談者・行為者
等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又はそのハラスメント
に関する事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するため
に必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。
なお、このプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人
情報も含まれること。
(ポイント)
〇 職場におけるハラスメントの事案についての個人情報は、特に個人のプライバ
シー保護に関連する事項ですから、事業主は、その保護のために必要な措置を講
ずるとともに、その旨を労働者に周知し、労働者が安心して相談できるようにす
る必要があります。
2)相談、協力等を理由に不利益な取扱いをされない旨の定めと周知・啓発
労働者が職場におけるハラスメントに関し、事業主に対して相談をしたことや、
事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局
に対して相談、紛争解決援助の求め、調停の申請を行ったこと又は都道府県労働局からの調停会議への出頭の求めに応じた
こと(以下「ハラスメントの相談等」という。)を理由として、解雇その他の不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者
に周知・啓発すること。
(ポイント)
〇 労働者が実質的にハラスメントの相談等をしやすくするために、
ハラスメントの相談等を理由とする不利益な取扱いされない旨を定め、
労働者に周知・啓発することが必要です。
〇 事業主の方針の周知・啓発の際や相談窓口の設置の周知に併せて、
これらについても周知することが望ましいでしょう。
⑤マタハラの原因や背景となる要因を解消するための措置
1)業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者等の実情に応じた必要な措置
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの発生の原因や背景となる要因を解消
するため、業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講ずること。(派
遣労働者にあっては派遣元事業主に限る)
(ポイント)
〇 ハラスメントの発生の原因や背景となり得る否定的な言動の要因の一つには、妊娠した労働者がつわり等の体調不良のため労務の提供ができないことや、労働能率が低下すること等により、周囲の労働者の業務負担が増大することがあります。
〇 例えば、育児休業取得者の業務について、業務量の調整をすることなく、特定の労働者にそのまま負わせることは、育児休業取得者への不満につながり、休業後の円滑な職場復帰に影響を与えハラスメントが発生することにもなりかねません。
(出典:厚生労働省)
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