(4)事業主が雇用管理上講ずべき措置とは
職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、
厚生労働大臣の指針により 10 項目が定められており、
事業主は、これらを必ず実施しなければなりません。
企業の規模や職場の状況に応じて適切な実施方法を選択できるよう、
具体例を示しますので、これを参考に 10 項目を実施してください。
なお、派遣労働者に対しては、派遣元のみならず、
派遣先事業主も措置を講じなければならないことにご注意ください。
また、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止の効果を高めるためには、
発生の原因や背景について労働者の理解を深めることが重要です。
セクシュアルハラスメントの発生の原因や背景には、
性別役割分担意識に基づく言動もあると考えられ、
こうした言動をなくしていくことがセクシュアルハラスメントの防止の効果を高める上で
重要であることに留意しましょう。
会社は、日頃から労働者の意識啓発など、周知徹底を図るとともに、
相談しやすい相談窓口となっているかを点検するなど普段から職場環境に対するチェックを行い、
特に、未然の防止対策を十分講じるようにしましょう。
まず、10 項目のポイントは以下の通りです。
1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
①職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあって
はならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
②セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容
を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
具体的には
(ポイント)
〇セクシュアルハラスメントの内容には、同性に対するものも含まれます。
〇性別役割分担意識に基づく言動の例としては、以下が考えられます。
①「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」などと発言する。
②酒席で、上司の側に座席を指定したり、お酌等を強要する。
〇「その他の職場における服務規律等を定めた文書」としては、従業員心得や必携、行動マニュアルなど、
就業規則の本則ではないが就業規則の一部をなすものが考えられます。
〇「研修、講習等」を実施する場合には、調査を行うなど職場の実態を踏まえて実施する、
管理職層を中心に職階別に分けて実施するなどの方法が効果的と考えられます。
〇パンフレットなどにより周知する場合は、全労働者に確実に周知されるよう、
配付方法などを工夫しましょう。
(ポイント)
〇「対処の内容」を文書に規定することは、
セクシュアルハラスメントに当たる性的な言動をした場合に
具体的にどのような対処がなされるのかをルールとして明確化し、
労働者に認識させることによってセクシュアルハラスメントの防止を
図ることを目的としています。
具体的な性的言動と処分の内容を直接対応させた懲戒規定を定めることのほか、
どのような性的言動がどのような処分に相当するかの判断要素を明らかにする方法も考えられます。
〇懲戒規定を就業規則の本則以外において定める場合には、
就業規則の本則にその旨の委任規定を定めておくことが必要となりますので注意してください。
2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③相談窓口をあらかじめ定めること。
④相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
また、広く相談に対応すること。
具体的には
(ポイント)
〇「窓口をあらかじめ定める」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足りず、実質的な対応が可能な窓口が設けられ
ていることをいいます。
〇このためには、労働者が利用しやすい体制を整備しておくこと、労働者に周知されていることが必要です。
〇相談は面談だけでなく、電話、メールなど複数の方法で受けられるよう工夫しましょう。
〇相談の結果、必要に応じて人事担当者および相談者の上司と連絡を取るなど、相談内容・状況に即した適切な対応
がとれるようフォローの体制を考えておきましょう。
(ポイント)
〇相談に当たっては、相談者の話に真摯に耳を傾け丁寧に聴き、相談者の意向などを的確に把握することが必要で
す。特に、セクシュアルハラスメントを受けた心理的影響から理路整然と話すことができない場合がありますの
で、忍耐強く聴くように努めましょう。
〇「内容や状況に応じ適切に対応する」とは、具体的には、相談者や行為者などに対して、一律に何らかの対応をす
るのではなく、労働者が受けている性的言動などの性格・態様によって、状況を注意深く見守る程度のものから、
上司、同僚などを通じ、行為者に対し間接的に注意を促すもの、直接注意を促すものなど事案に即した対応を行う
ことを意味します。なお、対応に当たっては、公正な立場に立って、真摯に対応すべきです。
〇「広く相談に対応」とは、職場におけるセクシュアルハラスメントを未然に防止する観点から、相談の対象とし
て、職場におけるセクシュアルハラスメントそのものでなくともその発生のおそれがある場合、セクシュアルハラ
スメントに該当するか否か微妙な場合も幅広く含めることを意味します。例えば、勤務時間後の宴会などで生じた
セクシュアルハラスメントについての相談や性別役割分担意識に基づく言動に関する相談も幅広く対象とすること
が必要です。
〇相談を受けた場合の「留意点」には、いわゆる「二次セクシュアルハラスメント(相談者が相談窓口の担当者の言
動などによってさらに被害を受けること)」を防止するために必要な事項も含まれます。
〇相談担当者に対する研修をするようにしましょう(対応の仕方、カウンセリングなど)。
〇相談・苦情を受けた後、問題を放置しておくと、問題を悪化させ、被害を拡大させてしまうので、初期の段階での
迅速な対応が必要です。
3)職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
⑥事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
⑦事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
⑧再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
具体的には
(ポイント)
〇事案が生じてから、誰がどのように対応するのか検討するのでは対応を遅らせることになります。迅速かつ適切に
対応するために、問題が生じた場合の担当部署や対応の手順などをあらかじめ明確に定めておきましょう。
〇事実確認は、被害の継続、拡大を防ぐため、相談があったら迅速に開始しましょう。
〇事実確認に当たっては、当事者の言い分、希望(どうして欲しいのか等)を十分に聴きましょう。
〇事実確認が完了していなくても、当事者の状況や事案の性質に応じて、被害の拡大を防ぐため、被害者の立場を考
慮して臨機応変に対応しましょう。
(ポイント)
〇セクシュアルハラスメントの事実が確認されても、往々にして問題を軽く考え、あるいは企業の体裁を考えて秘密
裏に処理しようとしたり、個人間の問題として当事者の解決に委ねようとする事例がみられます。しかし、こうし
た対応は、問題をこじらせ解決を困難にすることになりかねません。真の解決のためには、相談の段階から、事業
主が真摯に取り組むこと、また、行為者への制裁は、公正なルールに基づいて行うことが重要です。
(ポイント)
〇セクシュアルハラスメントに関する相談が寄せられた場合は、たとえセクシュアルハラスメントが生じた事実が確
認できなくても、これまでの防止対策に問題がなかったかどうか再点検し、改めて周知を図りましょう。
〇社内で相談しづらい雰囲気がないか、相談の対応状況を検討しましょう。
4)1から3までの措置と併せて講ずべき措置
⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
⑩相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行っ
てはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
(ポイント)
〇職場におけるセクシュアルハラスメントの事案についての個人情報は、特に個人のプライバシー保護に関連する事
項ですから、事業主は、その保護のために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に周知させ、労働者が安
心して相談できるようにする必要があります。
(ポイント)
〇実質的な相談や、事実関係の確認をしやすくするために、相談者や事実関係の確認に協力した人がそれを理由に
不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発することが必要です。
〇事業主の方針の周知・啓発の際や相談窓口の設置にあわせて、周知することが望ましいでしょう。
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